2025.09.02 お墓をお持ちの方

お墓の台風対策ガイド｜墓石の倒壊・冠水リスクを防ぐには？

夏から秋にかけて日本を襲う台風は、私たちの生活だけでなく、大切なお墓にも大きな影響を与えます。

強風で墓石が傾いたり、小物が飛散して隣のお墓を傷つけてしまうケース、大雨による冠水で地盤が緩み、数年後に墓石が沈下してしまうケースなど、実際の被害は決して珍しくありません。

いざ修繕となれば数十万円の費用がかかることもあり、事前の備えがいかに大切かが分かります。

この記事では、台風によるお墓の被害リスクと特徴、台風前後に行うべき点検・対策、被害が出た場合の修繕方法までを詳しく解説します。

「うちは大丈夫」と思っている方も、意外な盲点から被害が広がることがあります。台風シーズンを安心して迎えるために、ぜひこの記事を参考にお墓の点検と対策を進めてみてください。

台風によるお墓被害のリスクと特徴

台風シーズンになると、強風や豪雨による墓石や外柵の被害が全国各地で報告されます。

お墓は屋外に長期間設置されているため、建物以上に自然環境の影響を受けやすく、ひび割れ・傾き・破損などのトラブルが一度起きると修繕費も高額になりがちです。

被害を最小限に抑えるためには、台風によるお墓への影響やリスクの種類を正しく理解しておくことが重要です。

ここでは、風害・水害の特徴や発生原因、立地によるリスクの違いについて解説します。

台風がもたらす墓石への被害とは？

台風によるお墓被害の代表例は、墓石や外柵の倒壊、石材の欠け、ひび割れなどです。
特に高さのある墓石は風圧を受けやすく、強風で基礎部分に負担がかかることで傾きやすくなります。

また、石の表面に雨水が強く打ち付けられることで微細なヒビが広がり、長期的には劣化を早める原因となります。
花立や香炉、供物台といった小物類は飛散しやすく、隣のお墓や通路を傷つけることもあります。

こういった被害は台風が直撃した地域だけでなく、周辺をかすめた場合でも発生する可能性があるため、事前の対策が不可欠です。

風害と水害、それぞれの発生原因と被害事例

お墓における風害は、突風や暴風で墓石や外柵に直接的な力が加わり、固定部分や接合部が緩むことから発生します。

過去には、風速30m/sを超える暴風で複数の墓石が倒れた事例もあります。
飛来物による衝突も危険で、近隣の屋根材や枝が墓石を傷つけるケースがあります。

お墓における水害は、大雨や集中豪雨によって墓地全体が冠水し、地盤の緩みや沈下を引き起こすことで発生します。

水が長時間滞ると基礎部分が不安定になり、時間が経ってから傾きが目立つこともあります。
特に河川や海に近い墓地では塩害も加わり、石材表面の劣化や金具のサビが進行しやすくなります。

立地による被害リスクの違い

お墓の被害リスクは立地条件によって大きく異なります。

「沿岸部」は潮風による塩害と強風の両方が発生しやすく、金属部分の腐食や石材の劣化が早まります。
「山間部」では、倒木や落石などの飛来物被害が多く、強風による枝の落下にも注意が必要です。
「河川沿い」は豪雨による冠水リスクが高く、地盤が柔らかい場合は墓石の沈下や傾きが起こりやすくなります。

台風前に行うべきお墓の水害対策

台風は強風だけでなく、豪雨や長時間の降水による「水害」も深刻です。

墓地が冠水すると、地盤の緩みや沈下が起き、墓石や外柵が傾く原因になります。
また、排水不良や水はけの悪い立地では、水が長時間溜まり、基礎部分の劣化を早めます。
さらに、冠水後の泥や土砂が墓石表面に付着すると、シミや変色の原因となります。

被害を防ぐには、台風シーズン前の事前点検と対策が欠かせません。

冠水・浸水を防ぐための排水対策

墓地の排水路や側溝が詰まっていると、短時間の豪雨でも水が溢れて冠水しやすくなります。
台風前には以下をチェックしましょう。

排水が不十分な場合は、側溝の清掃や排水管の整備を墓地管理者や石材店に依頼することをおすすめします。

墓石や外柵の傾きを防ぐ地盤補強

水害による墓石被害の多くは、地盤の緩みによる傾きや沈下です。
特に盛土や軟弱地盤に建てられたお墓では注意が必要です。

地盤補強の方法としては、以下のようなものあります。

これらは素人では難しい作業のため、台風前に石材店へ相談し、必要に応じて工事を行うと安心です。

墓地の排水路・側溝の清掃と点検

排水機能を維持するには、定期的な清掃が欠かせません。
特に台風シーズン前には、墓地管理者と連携して排水路や側溝の点検を行いましょう。

また、墓地全体の傾斜や水の流れを確認し、水が特定の場所に溜まらないように整備することも大切です。
水はけの改善には、透水性の高い舗装や砂利敷きも効果的です。

台風後に必ず行いたい点検ポイント

台風が通過した後は、お墓の状態を早めに確認することが大切です。
被害が軽度なうちに対処すれば、修繕費用や工事期間を大幅に抑えられます。

特に、強風や豪雨による墓石の傾きや外柵の破損は、見た目ではわかりにくいこともあります。

また、台風後は墓地内の安全確保も重要です。
倒木や飛来物、ぬかるみでの転倒など二次被害を防ぐため、足元や周囲を確認しながら作業を行いましょう。

墓石の傾き・ひび割れ・欠けの確認

台風後は、まず墓石全体の傾きや位置のズレがないかを確認します。

水平器を使うと傾きが正確にわかります。
表面に細かなひび割れや欠けがないか、接合部に隙間ができていないかもチェックしましょう。

小さなヒビでも放置すると雨水が入り込み、冬季の凍結や再度の強風で悪化する恐れがあります。

外柵や付属品の破損状況チェック

外柵の石材や柱が緩んでいないか、接合部のモルタルや金具が外れていないか確認します。

花立や香炉、供物台などの付属品は、飛ばされていないか、欠けや割れがないかを見ます。
飛散して他のお墓に損害を与えてしまった場合、損害賠償が発生する可能性もあるため、早めの対応が必要です。

水はけや地盤沈下の確認方法

墓地内や周辺に水たまりができていないかを確認します。
台風後に水が長く残っている場合は、排水機能に問題がある可能性があります。

また、地盤沈下による段差や傾きがないかもチェックしましょう。
踏むと沈むような場所があれば、基礎の不安定化が進んでいるサインです。

被害が出たときの対応と修繕方法

台風によるお墓の被害は、早期対応が何より重要です。

小さなヒビや傾きでも、そのまま放置すると被害が拡大し、後に大規模な修繕が必要になる場合があります。
また、被害の内容や原因を正確に把握しておくことで、石材店への依頼や保険申請がスムーズになります。

ここでは、被害確認後の流れから修繕工事の方法、費用感、そして補償の可能性までを詳しく解説します。

石材店に依頼すべき修理・補強工事の種類

お墓の被害には、自分で対応できる軽微なものと、専門業者に依頼すべきものがあります。
特に重量のある石材は、専門工具や技術が必要なため、自己修理は危険です。

以下は、石材店に依頼した方が安全・確実な例です。

修繕費用の目安と見積もりの取り方

修繕費用は被害の程度や工事内容によって幅があります。

目安としては、軽度の欠け補修で数千円〜数万円、傾き修正や基礎工事を伴う場合は数十万円になることもあります。

リフォーム費用の目安は以下のページをご参考下さい。

お墓のリフォーム修理とは？雨風による経年劣化や地震などからお墓を守りましょう。

見積りを取る際は、以下を行うことによって適正価格と工事内容を比較できます。

保険・補助金でカバーできる場合の確認

お墓は火災保険や家財保険の対象外と思われがちですが、契約内容によっては台風による破損が補償されるケースがあります。

また、自治体によっては災害時の墓石修繕に補助金を出す制度がある場合もあります。

保険会社や自治体に問い合わせる際は、被害写真・見積書・現場報告書などを準備しておくと手続きがスムーズです。

遠方からでもできるお墓管理の工夫

近年は都市部に住みながら、故郷のお墓を管理している方も多く、台風の度に「すぐに見に行けない」「被害の有無がわからない」と不安を抱えるケースが増えています。

お墓は自然災害による影響を受けやすいため、遠方からでもスムーズに管理できる工夫を取り入れることが安心につながります。

台風後の墓地確認を代行依頼する方法

台風直後に現地へ行けない場合は、石材店や寺院、管理事務所に確認を依頼する方法があります。

多くの石材店では「お墓点検サービス」を提供しており、写真付きで被害状況を報告してくれる場合もあります。被害の有無を早めに把握することで、修繕の優先順位をつけやすくなります。

家族や親族との情報共有マニュアル作成

お墓の管理を一人で担っていると、遠方に住む場合に大きな負担となります。
そこで、家族や親族と「台風時の対応マニュアル」を共有しておくことが有効です。

これらを文書やLINEグループで共有しておけば、緊急時も混乱せず対応できます。

年間の定期点検・メンテナンス習慣

台風被害を最小限に抑えるには、災害直後だけでなく「事前の点検と継続的なメンテナンス」が欠かせません。

年に1回は石材店に依頼して墓石の水平や基礎を確認し、必要な補修を行うと安心です。
また、梅雨や台風シーズン前に排水路や側溝を清掃する習慣をつけることで、浸水被害のリスクも下げられます。

おわりに

台風シーズンにおけるお墓の被害は、強風や豪雨といった自然の力によって突然起こります。
墓石の倒壊や外柵の破損、冠水による地盤沈下などは、一度発生すると修繕に大きな負担がかかるため、事前の点検と対策が欠かせません。

今回ご紹介した「風害対策」や「水害対策」を実践することで、多くの被害を未然に防ぐことができます。特に、墓石の固定補強や小物類の飛散防止、排水設備の整備は、台風前に確認しておきたい重要なポイントです。

お墓はご先祖様を敬う大切な場所であり、家族の心のよりどころでもあります。だからこそ、台風という自然の脅威に備え、計画的に管理・点検を行うことが大切です。

この記事が、皆さまのお墓を長く安全に守るための一助となれば幸いです。

お墓の点検や修繕についてお悩みの際は、どうぞ 石のカンノへご相談ください。